
中小企業におけるインボイス制度の影響とは?メリットや特別措置についても解説
- カテゴリ: その他情報
- 公開日: 2023/12/4
2023年10月1日からインボイス制度がスタートしたことにより、さまざまな企業・事業に影響が出ています。
中小企業も他人事ではありません。制度の導入により、準備・負担などの増加が予想されます。その一方でメリットがあることも事実です。
本記事では、中小企業におけるインボイス制度について解説します。メリットや特別措置についても紹介するので、参考にしてください。
目次
1. インボイス制度が及ぼす中小企業への影響
インボイス制度が導入されたことにより、多くの中小企業にさまざまな影響が出ています。
そのなかでも代表的なものは以下の3つでしょう。
・記載項目の増加
・消費税負担額の増加
・経理作業の増加
それぞれの影響について解説するので、参考にしてください。
1-1. 記載項目の増加
インボイス制度の導入により、請求書に記載する項目が増加します。
導入前の請求書の主な項目は以下の5つだったでしょう。
・発行者の氏名(名称)
・取引年月日
・取引内容
・取引金額
・交付を受ける側の氏名(名称)
また、区分記載請求書等保存方式の場合は上記の5項目に下記の2項目の追記が必要でした。
・軽減税率の対象項目
・税率ごとの対価合計金額
インボイス制度では上記の7項目に加え、新たに以下の2項目の追記が必要です。
・税率ごとの消費税額と適用税率
・登録番号
インボイス制度で有効になる請求書は、以上合計9項目が記載されたものに限ります。
それ以外の請求書は適格請求書として認められないので、注意してください。
1-2. 消費税負担額の増加
インボイス制度が導入されたことにより、消費税負担額が増加する可能性があります。
その理由は仕入税額控除が適用されない可能性があるからです。
例えば、取引先と1万円(税別)の契約を結んだとしましょう。
報酬として支払う税込金額は11,000円です。
取引先がインボイス制度に登録していた場合、消費税は取引先が支払うことになるので仕入税額控除が適用され、納税義務は免除されます。
しかし、免税業者との取引だった場合は仕入税額控除の適用外となり、消費税の1,000円を納税しなければいけません。
1-3. 経理作業の増加
インボイス制度の導入に伴って、経理作業は増加するでしょう。
主な作業として以下の3つがあげられます。
・受け取った請求書が適格請求書になっているか
・適格請求書とそれ以外の請求書・領収書の仕分け作業
・発行する請求書の金額が誤っていないか
上記3つのなかでも特に注意すべきは、発行する請求書の金額チェックです。
項目が増えたことで、税率ごとの消費税額や税率が正しいかなどの確認をしなければいけません。
導入前に比べて記載項目が増えたことで、チェックが必要な箇所が増加しました。
仮にフォーマットに入力するだけであったとしてもケアレスミスが起こりやすいため、確認作業も増えるでしょう。
2. 中小企業におけるインボイス制度導入の準備
中小企業がインボイス制度を導入する場合には、どのような準備が必要になるのでしょう。
これから導入準備をしようと思っている企業は、気になるところかもしれません。
準備をするうえでの主なチェックポイントは以下の4つです。
・適格請求書事業者の登録申請
・取引先の確認
・請求書のひな型作成
・適格請求書の管理・チェック体制
それぞれチェックポイントについて解説するので、参考にしてください。
2-1. 適格請求書事業者の登録申請
インボイス制度を導入するうえで、必ずしなければならないのが適格請求書事業者の登録申請です。
適格請求書には登録番号の記載が義務づけられています。
この登録番号は、適格請求書事業者の登録申請をしなければもらえません。
申請方法は以下の2通りです。
・e-Taxを利用して申請
・書面で申請
e-Tax利用する場合は、画面に従って必要事項を記入します。
なお、パソコンからでもスマホからでも登録可能です。
書面で申請する場合は、国税庁のホームページから申請書をダウンロードして必要事項を記載します。
その後、管轄の税務署に郵送してください。
2-2. 取引先の確認
取引先が小売業者の場合は、インボイス制度の登録有無を確認したほうが良いでしょう。
自社がインボイス制度に登録したからといって、取引先が必ず登録するとは限りません。
その理由は、年間の課税売上額が1,000万円に満たない場合は登録義務がないからです。
免税業者として事業を続けていくことになるため、発行される請求書も適格請求書ではありません。
仕入税額控除が適用されないなどのデメリットも生じるため、対応が必要になるでしょう。
2-3. 請求書のひな型作成
適格請求書は記載しなければならない必要事項が多いことから、ひな形を作成しておくことをおすすめします。
なお、対応した会計ソフトなどが多数出ており、これらを活用すると良いでしょう。
最初の設定は手間がかかるかもしれませんが、一度登録してしまえばその後の面倒な作業は不要です。
必要事項は決まっていることから、こまかな設定が不要な会計ソフトもあります。
これを利用すれば、設定に時間をかける必要もなくなるでしょう。
2-4. 適格請求書の管理・チェック体制
適格請求書の管理・チェック体制も整えておくことをおすすめします。
すべての取引先がインボイス制度に登録しているとは限らないからです。
免税業者の場合は仕入税額控除が適用されないため、確定申告では別の作業が必要になります。
そのため、請求書は別にして管理しておいたほうが良いでしょう。
また、インボイス制度に登録済みの取引先であったとしても、必要事項がすべて記載されているとは限りません。
事務作業の煩雑さから、未記載の項目があるかもしれないのでチェックをしたほうが良いでしょう。
3. 中小企業にとってのインボイス制度のメリット
事務作業が煩雑になるなど、一見デメリットが多く感じるインボイス制度ですが、メリットもあります。
長い目で見た場合は、登録して良かったと思えるかもしれません。
主なメリットは以下の2つです。
・将来的な業務効率化
・取引先で有利になる可能性あり
それぞれのメリットについて解説します。
3-1. 将来的な業務効率化
インボイス制度に対応した会計ソフトは、多く出ています。
請求書発行も簡単になり、電子請求書での取引も可能です。
請求書用の用紙を用いた発行作業などが省略できるため、将来的には業務効率化が期待できるでしょう。
3-2. 取引で有利になる可能性あり
取引先の規模にもよりますが、年間の課税売上額が1,000万円以上の場合はインボイス制度に登録しています。
このような起業・事業者は、インボイス制度に登録しているところと優先して契約を結びます。
取引先が免税業者では、消費税負担額が増えるからです。
大手はほとんどがインボイス制度に登録しています。
売上などの利益を見越して大きな取引をしたい場合は、登録しておいたほうが有利になるでしょう。
4. インボイス制度導入に関する中小企業への特別措置
中小企業がインボイス制度を導入する場合、以下の特別措置が適用されます。
・納税額の2割に軽減
・小規模事業者持続化補助金の上乗せ
それぞれの特別措置について解説するので、参考にしてください。
4-1. 納税額の2割に軽減
インボイス制度に登録した場合、年間売上総額の2割が納税額対象となります。
具体的な内容は以下の通りです。
・2年前の年間課税売上高が1,000万円以下
・対象期間は2023年10月1日~2026年9月30日を含む課税期間
2年前の年間課税売上高が1,000万円を超えている場合は対象外となる点に、注意してください。
4-2. 小規模事業者持続化補助金の上乗せ
インボイス制度に登録すると、小規模事業者持続化補助金の上限額が50万円加算されます。
補助対象の内容は主に以下の通りです。
・機械装置の導入費用
・開発費用
・広報費用
・税理士相談費用
これらは一部であり、ほかにも対象となるものがあります。
詳しくは全国商工会連合会などで確認してください。
5. 中小企業にとってインボイス制度はメリットもある
中小企業とインボイス制度について解説しました。
インボイス制度の導入によってデメリットが増えるところもあるようですが、中小企業の場合はメリットもあります。
ただし、すべての取引先がインボイス制度に登録するとは限りません。
必ずすべての取引先に確認をしましょう。