
e-文書法って何?対象文書があるの?ペーパーレス化って何から始めたらいいの?ペーパーレス化を1から知ろう!
- カテゴリ: その他情報
- 公開日: 2023/10/9
業務の効率化を目的としてペーパーレス化を推進する企業が増加していますが、ペーパーレス化を進めるために重要な法制度があることをご存じでしょうか?
e-文書法と呼ばれるこの法制度によって、今まで紙での保存を義務付けられていた書類の電子保存が認められるようになりました。
企業側がe-文書法をしっかり理解することで、ペーパーレス化をスムーズに進めることができるのです。
今回は、e-文書法とは何か、e-文書法の対象文書、ペーパーレス化の始め方についてお伝えいたします。
目次
1. e-文書法とは?
e-文書法とは、簡単にいうと「保存義務のある書類の電子保存を認める法律」のことです。
法令により民間企業に義務付けられている書面の保存について、紙の代わりに原則すべて電磁記録による保存が容認されました。
e-文書法とは通称で、正確には2005年に施行された「民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律」と「民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」の2つの法律から成り立っています。
2. e-文書法の対象文書は?
e-文書法の対象文書はどのようなものがあるのでしょうか。
e-文書法の対象文書については「内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室」に詳しく記載があります。
e-文書法の対象文書は多岐にわたっていますが、以下その一部を紹介します。
・国税関係書類(仕訳帳、領収書、請求書など)
・医療関係書類(カルテ、処方箋など)
・人事・労務関係書類(健康保険、年金などに関係する書類)
・総務・庶務関係書類(株主名簿、取締役会議事録など)
他にも財務・税金関係や会社関係書類、企業決算に関わる重要書類など対象文書にはほとんどの法廷保存文書の書類が含まれています。
参考:内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室「e-文書法によって電磁的記録による保存が可能となった規定」
逆にe-文書法の対象外の文書もあります。
・緊急時に即座に見ることが可能な状態でなくてはならないもの(機械や乗り物などに備える手引書など)
・現物性の高いもの(免許書、許可証)
・条約による制限のあるもの
他にも不動産取引における重要事項説明書など、不動産関連書類の多くはe-文書法の対象外となっています。
3. e-文書法の要件とは?
e-文書法には対象文書がありますが、対象文書でも全て電子ファイル化が認められているわけではありません。
e-文書法の要件を満たすことで初めて電子ファイル化ができるのです。
e-文書法の要件については、経済産業省が前提となる4つの技術的基本要件を定めています。
1.見読性
2.完全性
3.機密性
4.検索性
この4つの要件は必ずしも全て満たす必要はありません。
4つの要件のうち「見読性」のみ全ての対象文書で必須となる要件になりますが、他の3つに関してはその対象文書の重要性や特性によって、満たすべき要件が異なります。
3-1. 1.見読性
見読性とは、電子化された文書の文字がパソコン等のディスプレイやプリンターで出力された際きちんと読める状態であるかを示すものです。
モニターに表示された文字が見にくい、読みにくいといったものは要件を満たせません。
3-2. 2.完全性
消失や破損といったリスクを防ぐための対応を行っているかを示すものです。
文書内容の改変や消去を防ぎ、実際にそれらが起きた場合にはその修正の履歴がわかるようになっていることが求められます。
改ざんされることなくありのままに保存されていることが証明されている必要があります。
3-3. 3.機密性
文書へのアクセスが制限されており、許可されている者のみが閲覧できる状態であることを示します。
パスワードをかける、暗号化するといった対応をしなければなりません。
3-4. 4.検索性
電子化された文書を必要な時にすぐに活用できるよう、必要なデータがすぐに検索できる状態であることを示しています。
4. e-文書法と電子帳簿保存法の違いは?
e-文書法とよく間違えられるものに「電子帳簿保存法」があります。
e-文書法が法律で保存が義務付けられている書類全てに適用しているのに対し、電子帳簿保存法は「国税(税法)で保存が義務づけられている書類」に限られています。
電子帳簿保存法の関係書類は以下の4つです。
・帳簿(総勘定元帳、売上台帳、仕入れ台帳など)
・決算書類(貸借対照表、損益計算書、棚卸表)
・取引関係書類(領収書、請求書、納品書、注文書)
・電子取引(電子的な方法インターネットやe-メールなどで授受した領収書、請求書、納品書、注文書)
電子帳簿保存法よりもe-文書法の方がファイル化できる範囲が広くなってると言えます。
5. ペーパーレス化のメリット
企業が書類を電子保存する場合、守らなければならない法律が2つあります。
それが先に説明したe-文書法と電子帳簿保存法です。
ペーパーレス化を推進するためには、この法律を遵守したうえで取り組む必要があります。
では実際にペーパーレス化による会社のメリットはどのようなものがあるでしょうか。
・紙の書類をファイリングする作業がなくなる
・保管スペースの確保
・電子化により検索性を高められる
・印刷関連のコストを削減(インク代、用紙代、電気代の削減)
・情報漏洩、紛失のリスク軽減
・DX化推進の一環となる
・テレワークなど多様な働き方に対応できる
e-文書法は企業のペーパーレス化を後押しする法律といえます。
6. ペーパーレス化の始め方
ではどのように企業のペーパーレス化を始めたらよいのでしょうか。
ペーパーレス化の進め方について説明します。
いきなり全ての書類をペーパーレスにしてしまうと不安に感じる従業員も出てくるため、少しずつ段階的に始めるのが良いでしょう。
日々取り扱っているビジネス文書からペーパーレス化を進める準備をします。
6-1. 目的を明確にする
会社の目的として「なぜペーパーレス化に取り組むのか」の目的を明確にする必要があります。
特に紙での業務に長年慣れている方は、急な変更に抵抗を感じてしまうこともあります。
さらにデジタル機器の扱いに不慣れだったりすると、ペーパーレス化のオペレーションが不便と感じ、ペーパーレスをせず紙を使い続ける従業員が出てしまう恐れもあります。
まずは、ペーパーレス化のメリットを伝えたうえで、デジタル機器が苦手な方のためにも研修を行うなど不安を取り除くことが大切です。
6-2. データ化する対象の紙媒体を決める
次にペーパーレス化をする書類の範囲を決めましょう。
一度に全てをペーパーレスにしてしまうと、社内だけでなく取引先に混乱を招く恐れがあります。
初めは一部の書類のみに絞り、慣れてきたら徐々にデータ化する書類の範囲を広げていくと良いでしょう。
徐々に社内へ拡大させていくことで、組織全体にペーパーレス化への意識が芽生えてくるはずです。
6-3. ペーパーレス化のツールを選定する
ペーパーレス化推進に関するツールはたくさん存在します。
企業の目的にあったもの、従業員が使いこなせそうなツールを選ぶことが大切です。
操作性の悪いツールを導入してしまうと効率化が図れないため、全員が無理なく使えるようなツールを選び、導入前には社内研修を開くなどすると良いでしょう。
6-4. ルールを決める
ペーパーレス化によって業務フローに変更が生じることもあります。
本格的に運用をする前に運用のマニュアルやルールを決めておく必要があります。
ペーパーレス化は社員全員で取り組む必要があるため、混乱を招かないためにも事前に明確なルールを決めておきましょう。
6-5. 実行と改善を繰り返す
ペーパーレス化をスタートさせてからは、分析と改善を繰り返していきます。
初めに設定した目的に対し、どれぐらい効果がでているかという分析を行います。
ペーパーレス化の実践において問題があれば、その都度見直しや改善を行います。
7. まとめ
e-文書法とは、会社の重要文書を電子ファイルで保存することを認め、企業のペーパーレス化を促進するための法律です。
業務効率の向上やコスト削減につながり、テレワークなど多様な働き方にも対応できるため、ペーパーレスは企業にとって欠かせない施策と言えるでしょう。
ペーパーレス化を推進するためにも必要性やメリットを明確にし、段階的に進めていくことがポイントです。
社内の課題を洗い出し、まずは身近なことからペーパーレス化に取り組んでみてはいかがでしょうか。